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2008年06月20日

[劇評?] 5/25 渡辺源四郎商店 『ショウジさんの息子』@アトリエ春風舎

すっとばして、今年、25本目の観劇。

渡辺源四郎商店 『ショウジさんの息子』

作・演出 畑澤聖悟

wonderlandsという
小劇場演劇などのレビューを行っているサイトがあるのですが、
現在、そこで行われている
劇評を書くセミナー「舞台を読む、舞台を書く」
に出ているのですが、そこで劇評を書くという課題があったので、
今回は自分が書いたものを載せることにします。
誤字とかおかしな表現があるかもしれませんが、
提出したものそのままで載せます。

劇評を書くこと自体が目的ではなくて、
また別の角度から劇を見てみたいということで参加したのですが、
いやー、久しぶりに文章書きましたが、つなたくて恥ずかしい(苦笑)。
ちなみに、講師の評価は「あなたは一体どう思ったのか」ということだそうです。
要は、「あなたは面白かったのか、つまらなかったのか」というところが
まったく欠けていたということですかね(汗)。
たしかに、淡々とあらすじを書いて、
客観に徹して自分を殺してるような文章だな、と思います。
そういうことで、恥ずかしながら、続きをどうぞ↓

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「役者から観客へ手渡しで伝わる物語」

 脚本家・演出家の畑澤聖悟が主催する青森を拠点として活動している渡辺源四郎商店。
今回の作品『ショウジさんの息子』は新しい活動の場所として、アトリエ・グリーンパー
クのこけら落とし公演であり、05年初演の『ケンちゃんの贈りもの』をリニューアルした
作品である。
 80歳になるショウジはその娘婿のマサヒコの二人暮し。ショウジの傘寿の誕生日にお
互い贈り物を考えるのだが…。マサヒコがお祝いに買ってきたお寿司とお酒を二人で囲み、
傘寿を祝う。マサヒコの長年の付き添い感謝し、ショウジは養子縁組を持ちかけ、そして
御見合を持ちかける。マサヒコはどうも乗り気でない、それどころか恩をあだで返すよう
に、ショウジにいわゆる老人ホーム行きを勧めてしまうのであった…。
 舞台上で語られる物語は時間軸が大きく変化することがなく、ショウジを祝い、贈り物
をめぐる出来事をうまく切り取ったという形で示される。ストーリーを語る前に人物をじ
っくり語る。そういう意味では、こちらも戸惑いがなく物語をじっくりと見ることができ
た。マサヒコが“記憶が薄れていく病”に罹っていることがだんだんとわかってくるが、
ショウジや周りの人にはなかなか伝わらないことにマサヒコは苦しむ。畑澤聖悟氏扮する
ローカル芸人“マンモス兼平”も、80歳を迎える宮越昭司氏扮するショウジもわかっちゃ
くれない。その苦しみに同情するのはもちろんだが、その一方でマサヒコの苦しみに気付
かない舞台上の役者に観客は苦笑をしてしまう。舞台に対しては観客はどう見ても客観者
ではあるけれど、苦しみと笑いを観客から引き出してその距離を縮め、人物を通じて物語
を感じさせるかのような印象を受けた。
 初演の『ケンちゃんの贈りもの』との違いの一つに、ローカル芸人“マンモス兼平”と
その弟子二人の登場であったが、初演時には無かった笑いがそこにあり、それは“芸人”
という名目の元に、少々作りめいた印象もあったかもしれないが、それが終わりの場面で
観客に涙を誘うことに繋がったのではないだろうか。終わりの場面では、老人ホームへと
旅立ったショウジがすぐに戻り、マサヒコの告白を聴きながら、再び二人でお寿司を囲む
ところで終わるのだが、もうすでにそこに至るまでに観客はすでにマサヒコとショウジの
物語に飲まれてしまったのではないか。観客を物語に引き込むのに目新しい手法ではない
のかもしれないが、物語に無理に欲張ったものはないし、物語─役者─観客というライン
をしっかりと意識した作りには好感が持てた。
 ちなみに舞台上のセットは、壁も台所も冷蔵庫(!?)も板張りで作られていて、今ま
でにないポップな印象を受けてしまった。そのまま青森の風を持ち込もうとしたのだろう
か。初演時にも出演していた実際に80歳を迎えるショウジ役の宮越昭司(劇団雪の会)
さんはしっかりしたセリフに若手の役者とも息がぴったりで、むしろ役を楽しむかのよう
な豊かな演技で、若手にちっとも負けてない。
 渡辺源四郎商店の舞台は、人物を通じたストーリーを語る強さが際立っていると思う。
言葉が悪いが、地味な話を味わうのが好きな人にはお勧めできる劇団だと思う。

投稿者 i_rain : 2008年06月20日 00:56

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