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2008年12月07日

11/22 12/6 青年団第57回公演『冒険王』@ 駒場アゴラ劇場

演劇のことは久しぶりに書きますが、
ちゃんとコンスタントに観ておりました。
ということで、今年観た演劇(多分)56本目。

2008年11月15日(土)~12月8日(月)
青年団第57回公演『冒険王』
作・演出 平田オリザ

イスタンブールの安宿に住み集った
西にも東にも進めない若者たちを描いた物語(初演1996年)。

演劇とは日常とは違った物語・世界を
楽しむものであると思ってはいます。
けれども、私たちは紛れも無く現実の世界に生きている人間であるし、
自分の世界の範囲外のものに対しては、
畏怖の念のようなものを持ってしまうのも致し方ないところです。
そういうことで、後ろ向きな理由でありますが
現代口語演劇はとても受け入れやすく
観ていても自然に感じるところが多いなあ、と思ってるところです。
逆に言えば、許容の範囲が広いと、見る側の求めたいものに対して
単純にどこか物足りないと感じるところもあるかもしれません。
それでも、会話の不自然さ・違和感が強くなる演劇は
私には受け入れがたい部分が大きく、
青年団が私には最も受け入れやすいものかなと思ってます。

青年団の演劇は2回見ることが多いのですが、
どうしてかというと複数の会話が同時進行することが多く、
単純に言えば2回見た分だけの味わいがあるような気がしてます。

ほとんどストーリーの内容には触れていませんが、以下に続く。

11/22と12/6の2回見ましたが、
その間にこの『冒険王』の元となった
平田オリザ著
“新版・十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が
到達した最後の点と、到達しえた極限とを明らかにして、
上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本”
を読んだので、2回目のときはナルホドと思って観ておりました。
場面としては本のごく一部ではあるのですが、
日記に記されたことがあちらこちらに出てくるのです。

さて、このお話は“行き場の無い日本人”を描いている、
というのですが、初演時から10年以上経過した今から見ると、
少なくとも私の視点では、自由闊達で希望はあちこちに
見出すことができた時代だったのではなかろうかと思いました。
“西にも東にも進めない”ではなく、
どちらにも自由に進むことの出来る(希望を選択することの出来る)ように思えました。
作者の平田オリザさんも今回の再演では戸惑いもあったようで
パンフレット上にここで出てくる若者を“活動的な”若者と記してありました。

単純な感想では“羨ましい”という言葉が浮かびましたが、
それはなんだろうか?
彼らが何を手にしていて、私たちは何を手に出来ないものだろうか?
よくあちらこちらで言われていることですが、
彼らにはまだまだ掴み取れるもの(情報という言葉がよく使われますが)が多くあって、
彼らの時代よりも溢れてしまっている今は、掴み取れるものを求めて、
(平田オリザさんの言葉で)“立ち往生”しているのかなと思ったしだいです。
“彼ら”と“私たち”という括りは乱暴ですが、
同時代に生きられない人々はそれぞれに“立ち往生”しており、
70年代末の彼らがいったい何に“立ち往生”していたのか
劇からは感じ取れませんでしたが、
確かに1つの時代がそこで変わりつつあることを
漠然と受け取れることができたかと思います。
非常に面白かったです。そして、どこか懐かしい気持ちがしました。
それは“憧れ”という言葉かもしれません。

投稿者 i_rain : 2008年12月07日 21:55

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