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2012年06月23日

著作権法改正がいろいろ騒がしいので

あえて著作権法の論点をあっちこっち散らしてみる。
俺は基本的に著作者の権利強化は、正しく収益につながって、創作活動の発展に寄与するなら賛成の立場なのだが。

1.今回の著作権法改正について
 大そもそも論、法律というのは、普通の人が普通の日常生活を送っていることを罰するようには出来ていません。
 だから著作権法も「通常の利用」というか、私的利用・小規模な利用には基本メクジラを立てない構成になっています。
 が、わざわざコピーガードをかけて売られているDVDのコピーガードをはずしてコピーすることや、違法にアップロードされていることがわかっているデータをダウンロード(要するにコピー)することが「通常の利用」なのか?
 逆に言うとそれを「通常の利用」と言っちゃっていいのか?
 基本的にはつまりそういうことでしょう。
 (リアルプレイヤーをインストールするとフツーにYoutubeの動画がDLできるようになっちゃうのはどうしたもんかと思う)

 Youtubeを見てるだけでダウンロードが行われてるから捕まる、と言う弁護士がいますが、キャッシュ(一時ファイル)に関する権利制限規定との関係性はどうなるのか、俺としても知りたいところです。
 俺は権利制限規定で、キャッシュ=ダウンロードではない、と言っている以上、対象じゃないと思うんだけど。

投稿者 ushila : 01:09 | トラックバック

2.書籍出版社の著作隣接権創設議論

ビジネス用語ですが、音楽出版者という契約上著作権を持っている企業があるので、便宜的に「書籍出版社」という言葉をいったん使います。以下普通に「出版社」で。
アメリカではMARVELみたいな「出版プロダクション」があって、出版プロダクションが立てた企画をシナリオライターが頭寄せ合って原作にして、漫画家が漫画にする、と言う分業制があったりもします。
だから同じ作品が、作家が代替わりしながら書き続けられたりします。
そういう意味では、ミッキーマウスとスパイダーマンは地続きって言うことでしょう。
一方、日本では漫画産業は基本的に「漫画家」や「漫画原作者」と、それを本にする「出版社」は別々の事業体です。契約関係としては「請負」に近いと言えると思います。

出版社に著作隣接権を与えることに反対する人たちは「出版社は漫画家に対して優越的な立場にいるので、これ以上権利を強化されたらたまらない」と言いますが、もしそんな契約関係を強いられているとすれば、それは著作権法の議論ではなく、一般法としての民法や独占禁止法の問題です。

投稿者 ushila : 01:08 | トラックバック

3.マンガ喫茶はどうするんだ

マンガ喫茶での著作物の「利用」は多岐にわたっています。
客に施設内でマンガを読ませることは普通の喫茶店でもあることなので区別がつかない とか、
個人別に仕切られたブースでDVDを見たりゲームをすることは「上映」の概念を満たさない とか、
そういう議論がありますが。

時間制料金で客を個室(半開放型でもいいけど)に入れて、ドリンク料金が利用料に含まれるというマンガ喫茶の典型的な営業形態が、通常の喫茶店と判別できないわけがない。
むしろホンマモンの「フェアユース」なんか導入したら、真っ先に「売り上げの阻害」要件に引っかかると思うわけで。だんだん俺フェアユース規定導入賛成論者みたいになってきたな。

あ、図書館と同じだろ、って言う人、まさかいませんよね?

投稿者 ushila : 01:06 | トラックバック

2012年06月22日

4.パロディ規定の創設

パロディに関して著作権法に規定を設けようという動きもあるようです。
パロディを規制するものではなく、逆にパロディについて一定の範囲で自由利用(権利制限)を認めようという話であると基本的には理解するべきでしょう。

パロディの辞書的定義には、原作品への批評と(社会)風刺が含まれるそうで、日本における典型例は「日本以外全部沈没」あたりでしょうかね。
あと、寺山周司が「さよならだけが人生だ」に対して、「さよならだけが人生ならば」と詩を書いてますね。
ああ、「いんでっくすたん3(まさかのイカデックス公式化)」は、インデックスとイカちゃんが似ていると騒がれている状況を逆手に取ったパロディと言えないこともないかな。ライセンスどうしたんだか知りませんが。
ニャル子さんとかで他作品のセリフや固有名詞を連呼するのとか、「オタクの会話をカリカチュアライズする」意図と解釈すればパロディとして成立するのかね。

で、そういう辞書的定義からすると、日本でパロディと呼ばれているもののほとんどは他だの二次創作です。
契約の有無の違いはありますが、漫画や小説のアニメ化や、それにともなう話の筋立ての変更・オリジナルエピソードの追加などに、性質としては近いものと言えるんじゃないかと思います。
むしろ最近同人業界?は、パロディという言葉を使うんですかね。

で、「広義のパロディ」なんて言葉で、無許諾の二次創作全般をいったん括ってから議論しようとしているようで。
官僚や学者が言葉の意味を拡散させてどうするんだよ。
と、個人的には強く思うのですが。

さて。前にも書きましたが、フランス著作権法にパロディの規定が一応存在します。
でも、「該当分野の公正な慣行に合致すること」って書いてあるんだよね。
パロディなら何でもオッケーなんじゃなくて、業界のルールや過去の裁判例なんかを考慮した上でやりましょう、と。

「公正な慣行に合致すること」っていうのは、アメリカ法のフェアユースの要件や、日本法でも「引用」の基準として使われる考え方と同じです。
日本版フェアユースとやらがいささかポシャり気味なので、その一部の要素を拡大したつもりなんでしょうか?
フェアユースよりは日本法に接ぎ木することに無理がない考え方だとは思いつつ、条文はすごくふんわりするかすごく窮屈になるか、どっちかでしょう。

いずれにしても、そこにはOKなパロディとNGなパロディができる、というだけのように思います。
ピースちゃんがアへ顔ダブルピースしてるような薄い本とか、やっぱり無理があると思うんだよね。
それで、NGとされちゃったパロディは、今より厳しい立場に置かれるだろうことは、想像に難くありません。
しかもコミケの開催日別の入場者数とか見るに、NGなパロディとされそうなものほど、ニーズは高いと。


だからと言って「今の状況がベスト」だとか言う権利者とも意見が相容れませんが。
むしろ二次創作に積極に許諾出すとか、東方がそんなに偉いなら東方みたいにガイドラインを定めるとか、そういうことをしてみろと。
出版社も「腐女子さんたちのおかげで漫画が売れるのでBL二次創作は原則OKですが、痛そうなのとか止めてください」とか言っちゃえばいいんだよね。

逆を言えばそれができるのも著作権者なのですから。
そしたらこんな規定必要ないぜ。

投稿者 ushila : 21:26 | トラックバック

著作権の問題じゃなくて

単純なビジネスの問題として考えたい話は、他にもある。

動画投稿サイトが証明しちゃったことの一つは、商品としてのサイクルは一段落しちゃったコンテンツにも、それなりのというか、総再生ベースで行くと相当なニーズがあると言うことだ。

もうあそこを文化のアーカイブとして無視することは、どうも不可能なように思う。

だったら、積極的に活用すればよいのではないか。

たとえば。
商品のプロモーションが終わってしまうと死蔵されるPVやCM。
あるいは、CDショップに行くと一部の好事家のために全曲集なんかが売られてるが、明らかに売れてる気配の無い古い歌手の全曲集。
テレビで一度流れてしまえば、基本的には消えてなくなる生放送番組。

そうしたものもストリーミングで小さな単位で配信できれば、見る人間は少なからず存在する。
ということは、そこに収益モデルが作れる、ということである。

コンテンツホルダーが本当に守りたいのは、まだまとまった金になるコンテンツや、これから育てたいコンテンツであって、商品として一周も二周も回り終わっちゃってるコンテンツ(もう引退しちゃったり死んじゃったりした歌手のアルバムとか)は、逆に抱え込んでてもコストになるだけだし、仮にストリーミングできてもコレクターは買うだろう、と思う。

ならば、本当に守りたいコンテンツを守ることにコストを傾ける代わりに、資本回収が終わっちゃったコンテンツは報酬請求型モデルに回してしまう、というやり方はどうだろうか。
たとえば、動画投稿サイトにユーザーがアップロードしたものでも、画質や音質などの水準を満たさないものや、原作品のイメージや市場価値を損ねるもの以外は積極的にオーソライズして、むしろ再生回数に応じた使用料収入を受け取れるようにするとか。
なんだったらコンテンツホルダーがアップロード用のファイルもサーバーも用意しなくていいし。

それが産業界における当たり前の商品のライフサイクルの管理なのではないのだろうかと。
映画業界は近いことやってるんだけどね。

でまあ。
主にコストと収益のことしか言ってこなかったわけだが。
動画投稿サイトがアーカイブであるなら、コンテンツ産業も巨大なアーカイブなんだよね。

文化振興が著作権法の目的である以上、動画投稿サイトの役割は本当は権利者がやらなければいけなかったことなんじゃないか、と考えたりもするし、
コンテンツ産業が専属実演家契約だの音楽出版契約だので実演家や著作者を縛っている以上、コンテンツ価値の拡大は彼らの義務でもある。

以上は、あくまでも試案だし私案なんだけど。

自社がULしたファイル以外は全部違法とした上で、ものすごい勢いで増加する違法ファイルに何ら有効な対策が打てていないコンテンツ産業のあり方は自縄自縛なんじゃないの? と、思うのだ。

投稿者 ushila : 21:20 | トラックバック

だがしかし。

今回の件で旗幟鮮明に自分の立場(主に反対の意見)を表明しているのは、シンガーソングライターや漫画家と言った、なんとなれば自分一人でも創作活動ができる職種の人が多い。

何よりも作家って元々ファンだろうから、そういう感覚になるのは理解しつつ。

だがしかし。

そういう人は業界を挟まなくても仕事を続ける手段がある、ということでもあるのだろう。
だから業界よりもファンの側に立って話がしやすい。
と、ちょっと割り引いて考えることにしている。

ふたたび、しかし。
著作物というものは、そういう誰か一人の才能で生まれるもの、世に出るものばかりではない。
音楽の分野で言えば、専業の作詞家・作曲家や、映画・舞台で活動する、いわゆる劇伴作家。
漫画に似ているもので言えば、物語性を伴った視覚表現と言う括りでの、映画やアニメーション。

こうした、多数の人間が関わることを前提とした表現と言うものも存在していて、それはそれで文化の多様性の一角を担っている。

いわゆるメジャーの制度疲労も浮き彫りにはなってるんだろうけど。
タイアップや広告に頼りすぎだとか、二番煎じ・三番煎じに走りすぎだとか、保守的だとか。
(個人的には、コンサートとかレコーディングの打ち上げのビンゴ大会で豪華景品が乱れ飛ぶのとか聞くにつけ、頭の中で想定売り上げと経費計算してげんなりする。それコスト=チケット代に繰り入れてないよねみたいな)

それでも。
やっぱメジャーが分業制をうまくコントロールできたからこそ成立した作品って言うのはあったし、これからも生まれるのだと思う。
音楽で例示すると、松田聖子も椎名林檎も、あるいはTMNの小室みつ子楽曲も、メジャーがなければ誕生し得なかったんだろう。
(俺自身の趣味で言えば、フォルテシモ(HOUND DOG)も相馬裕子も「大槻ケンヂと絶望少女達」も、ってことになるのかな)

映画なんかなおさらだよね。
一人でアニメ一本作り上げちゃう人とかいるけど、その人ジャッキーチェンと同じスピードで新作作れる訳じゃないよね。

だからさ。
メジャーの製作環境が維持できないレベルに追い込むのは、それはそれであんまり楽しい未来に繋がってないんだよ。
一人の専門家が100個の名作を作る傍ら、在野のアマチュア100人が1個ずつ名作を作る未来でいいじゃない。
何でそれは対立しなければイカンのか。

投稿者 ushila : 21:18 | トラックバック

2012年06月13日

その後のBBB9900

9900が欲しい人に大勢お越しいただき、ありがたいことです。

というわけで、何となく購入から1ヶ月ぐらい経ったところで、その後の使用感レポートをば。

◎本当に良くなったブラウザ
 ブラウザについては体感ではっきりと機能向上がわかります。通信速度に変化がないはずのwifi環境でも描画スピードが違います。
 その関係で、Operaの使用シーンが明確にこれ、と言いにくくなっています。パーツてんこ盛りのアフィブログとかはOperaの方が描画のしかたが上手いかもなー、という程度でしょうか。

○地味に早いデータ転送速度
 あくまでも「地味に」です。やっと2桁メガですからね。ただ、これ以上の転送速度を求めている人は、BlackBerryに求めるものが違うと思います。あればあったでうれしいけど。

○素直な無線LANアダプタ
 これも普通のスマホからすれば普通のことが普通にできるようになっただけですが、普通が普通じゃないのがBlackBerryなので。

△しょっちゅうコケる日本語変換
 長文を打っていると、だらしなくエラーメッセージを出して変換に失敗します。
 後述の通り予測変換オフで運用しているので、打ち直しが非常に面倒です。
 が、9700は日本語変換がコケるとコンフィグから立ち上げ直しだったので、それに比べれば全然マシでしょうか。
 と言うか、blackberryにこそATOKじゃないのかと、docomoを小一時間問い詰めたいです。

●心許ないバッテリー駆動時間
 今時のスマホは高速化&大画面化とバッテリーの大容量化のおっかけっこなので、どれもこれも似たようなものなんでしょうが、9700の長いとは言えないまでも普通の生活サイクルなら十分1日持つバッテリーに比べると、本当に何で容量減らしちゃったかな、という気持ちで一杯です。
 ツワモノの皆さんはバッテリー二個持ちで対応なさっているようですが、僕は他にも装備があるので、iBUFFALOのモバイルバッテリーを持ち歩いています。
 って言うかスマホ全般が会社で充電ありきなんじゃねーかという疑念が沸々とわいてきます。

●起動の遅い予測変換
 最初のひらがなを打った瞬間に若干のタイムラグを感じます。
 あとは、予測変換時のスライドパッドの操作が横方向しか受け付けないので、9700からの乗り換えだと、単純に操作方法の変更にともなう違和感がなきにしもあらずです。
(9700の予測変換は下向きに候補選択ができたような気がする)
 よほど定型文ばかり入力するのでもないかぎり、指がキーボードから離れるデメリットの方が大きいような気がします。
(今予測変換オンで書いてますが、ほとんど使ってません)
 と言うか、blackberryにこそATOKじゃないのかと、RIMを小一時間問い詰めたいです。
(なぜかジャストは問い詰めない)

●知らんうちに更に減ってた内国産アプリ
 NAVITIMEが無料状態でも結構いい仕事をしてくれたんですけどね。
 今や路線検索のためだけにGoogle Mapsを立ち上げる有り様です。まあ、できることは大して変わらないからいいけど。

□結論・アゲイン。
 BlackBerryはそもそも完成されたハードなので、どうも9900は保守的な設計に見えますが、通信回り以外の機能追加は機械としてのバランスを崩す結果にもなりかねません。

 「一番小さい?文字情報記録・発信ツール」としてのBBBは、やっぱりアレやソレとは違う機械として、役割を明確化して持つべきでしょう。
 9900はだいぶマイルドというか、器用になったとは言え、それでも、「スマホらしいことはこれ1台で何でもできる」機械が欲しい人とは相容れない機械だと思います。
 ちょっと前の記事を見ていただけばわかるとおり、僕のカバンの中にはBlackberryとAndroidとi OSが揃い踏みしますが、それでもワンセグとおサイフケータイは死角ですし。
(地震直後は何かあったときのため用にワンセグつきのガラケーもSIMなしで持ち歩いてた)

まあでも、この記事ぐらいの文章は苦労せずに書けますので、ちょっと長い文章を書く用事がある人は、購入を検討してもいいんじゃないですかね。
見た目もかっこいいし。

投稿者 ushila : 20:31 | トラックバック