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2011年12月30日

2011年善光寺様賞

いろいろあった今年も、この季節がやって参りました。

この賞は、今年も私こと善光寺 牛がなんとか生き延びることができた原動力となった人・物・事を、勝手に表彰するものです。
辞退は認められませんので、悪しからずご了承ください。

大賞
劇場版マクロスフロンティア 比翼恋離-サヨナラノツバサ-

話の筋立てとか細かい場面のトホホ感はマユゲ監督の味と割りきって、とにかく音楽が素晴らしい作品だったと思う。
ネタバレっぽいことはこれまで我慢してきたわけだが、特にクライマックスで流れた「サヨナラノツバサ」は、シリーズを通してわざと避けてきたかのような北欧神話のバルキリー伝承を見事に消化し、歌姫の二人こそが戦乙女であると解題する見事な一曲だった。
個人的にはランカの新曲がいちいち涙腺を刺激されるわけだが、軍服シェリルもよかったなあ。

YF-29の一番でかいフォールドクオーツが「賢者の石」と呼ばれている辺り、オープニングの「禁断のエリクシア」も伏線だったんだろうなあ。


最優秀小説賞
「聖剣の刀鍛冶(11)」

話の中で地震を起こした直後に東日本大震災が発生したもんで、震災後の作者は何も手が付かない状態だったりしたらしい。
関西大震災直後に話の中で似たような地震を起こして、俺ならこうすると長広舌をぶちかました荒巻義男のような作家もいるし、どっちが正しい姿勢かなどと言うつもりもないのだが。
作中、一人の自衛騎士団の少女が言う。
「だって私たちは、何度でもやり直せる」
作者がこの巻を今年書き上げた意味は、この一言のためにあったと言って良いのではないだろうか。
本当にね、三浦さん、良く書いたよ。


スポーツ賞
なでしこジャパン

感動をありがとうとか、勇気をありがとうとか言うつもりは毛頭ない。
スポーツマンはただスポーツに対して真摯でありさえすれば良い。

違うな。
真摯でなくても、誰にもできない成果を挙げてくれればそれで良い。
そして、彼女たちが成し遂げたことは、まさしく前人未到の偉業だった。

なでしこジャパンの皆さんは何故かわりと皆さんストイックだし、謙譲の美徳を心得ているのか、応援してくれた皆さんのお陰ですとか、もっと皆さんに喜んでもらえるよう頑張りますとかおっしゃるわけですが。
見てる方のほとんどは、わりと無責任に喜んでいるだけなので、うれしー、あたしスゲー、サッカー超たのしー、もっと誉めて誉めてー、って、言っていいと思う。


音楽賞
該当なし

大賞が実質音楽賞なので、それ以外は次点、という意味で。
というわけで次点をずらずら。

少年よ我に帰れ(やくしまるえつことメトロオーケストラ)
どうやら輪るピングドラムのひとつのテーマが、現代の閉塞感にあるらしいことが明らかになった現状、全て壊しても、逃げ出しても、あなたが思うようにしていいんだよ、と歌うこの曲の切実感のようなものが突き刺さる。
前期OPのノルニルもピングドラムの世界観にぴったりと寄り添う名曲。

コネクト(claris)
魔法少女まどか☆マギカを、実質ガハラさんじゃねえや、ほむほむの物語と解釈すれば、この曲もやっぱりほむほむの曲。

Rock over japan(トリプルH)
ぶっちゃけ「せいぞーん せんりゃくぅー」と、この曲を聴くためだけにピングドラム見てました。
なんであんなにARB押しなんだか良くわかんないけど。オリジナルはオリジナルでちゃんとロックなんだよなあ。

誇り高く(東京エスムジカ)
もうなんと言うか、本当によくやってくれたと思う。それ以上細かいことは言いたくない。試聴と歌詞を見ることができるので、公式サイト参照のこと。


最優秀ドラマ賞
該当なし
言っても今年戸田ちゃんドラマ2つと執事ドラマと坂の上の雲しか見てねえし。
ああ、ガッキーのやつも見たな。


新人賞
荒川美穂(高倉陽毬(輪るピングドラム))
ひまりかわいいよひまり。
ラジオは最近トークがこなれてきて一周回って残念。

次点
武井咲
個人的には戸田ちゃんドラマの早熟で影のある演技(あれは「高校教師」の桜井幸子だと思う)よりも、リズム天国のCMで、おでこ全開にして「てけてけどっかーん!!」言うてるガキんちょみたいな笑顔の方がツボ。


最優秀男優賞
阿部寛(秋山好古(坂の上の雲))

日清戦争編の「あしゃあ旅順に行くぞなー」もけっこうツボだったのだが、死にかけてうわ言いってる芝居が強烈だった。
いい役者になったなあ阿部ちゃん。あと手がゴツい。
ところで風間トオルは何してんのかなあ。


最優秀CM賞
年末ジャンボ宝くじ

西田敏行が倍一文字の兜つけて歌ってるヤツ。
ゴージャスすぎて逆に控除率とか考えちゃうのはどうかと思うが(笑)。

次点
BIG(ダイヤモンドver)
なんか、奥居ってあんなんだったよね。
動きとか、なんと言うかデヴじゃあないんだけど、体型のゴムマリ感と言うか。

まつりか†ほりっく
前略ふるさとのお父様、お母様、まさかCMまであのノリで通すとは思いませんでした。
メディファクははがないでもおんなじようなことしてるけど。


俺的に残念賞
さよなら絶望放送

単純に終わっちゃった的な意味で。
神谷、新谷、マヨネーズ&マーガリンのこれからのご活躍を祈念いたします。また会いたいなあ。


本当に残念賞
能登麻美子(時籠ゆり(輪るピングドラム))

というかピンドラにおける宝塚の表現が、心の広いヅカオタのお姉さま方といえども本気で怒るレベルだと思う。歌もアレだが、ゆりさんガチ百合だし。
どっちかと言うとイクニが悪いかもしれない。

いい加減仕事選びなさい賞
寿美菜子

魔乳秘剣帖が見るに耐えなかった。ぶきみんは上手くて当たり役も十分あるんだから、もうあんな役やんなくていいのに。


最優秀アニメ作品賞
魔法少女まどか☆マギカ

マミさんがマミられた回を見逃したのが痛恨だが、特に最終回3話連続の内容が秀逸だった。
もし地震がなくても、あの構成で放送すべきだったとさえ思う。
まどかが「もう絶望する必要なんてない!」って言うシーンが、シャフトの「もう絶望先生はやりません」という意味に聞こえたのは俺だけでいい。
大賞がアニメ映画なのでここも該当なしでいいんだが、テレビアニメ部門みたいな感じで。

次点
Steins;Gate
キャラの造形(内面を含めて)も物語の構成も、力のある作品だと思う。
クライマックスで再登場した鈴波が屈託なく「お父さん」って呼ぶのも良かったよね。

輪るピングドラム
うん。話は全然わかってないが、視聴覚的に楽しい作品だった。

Fate/zeroとかもホライゾンとか面白いんだけど、なんかすぐ続きをやりそうなので、選考対象外。ちはやふるとかね。


最優秀飛び道具
福圓美里

神様ドォルズといいはがないと言い、演劇界における「自己解放」とか言う言葉の意味が身に染みてわかります。ククリも喜んでるぅー。


特別賞
絶望自衛官の皆さん
LCACクッション艇

東日本大震災をはじめとして、いくつもの災害の被害を少しでも食い止めようとしている人たちの代表として。


ノンジャンル賞
こっそりピングドラム
なんというかものすごい絶望臭。おしむらくは思ったより早く終わっちゃったのと、おれ自身見始めたのが遅かったこと。

gdgd妖精s
微妙にアニメ部門に入れにくい。
あけさかさんも相当飛び道具だと思う。この人は単純に捨て身なのだろうか。

投稿者 ushila : 19:40 | トラックバック

2011年12月26日

そうか。

まだアップしてない善光寺様賞の文章を読みながらもう一度考えてみる。

俺は輪るピングドラムを世界の閉塞感への挑戦の物語と理解していたわけだ。

しかし、冠馬と晶馬の二人にとっては、陽毬が救われるならば、世界の仕組みなどどうでも良かったのだろう。
ただ彼らは、陽毬が笑っていられる場所が作りたかっただけだ。

一方、眞悧の目的はあくまでも世界の仕組みの破壊にあって、おそらく冠馬と陽毬は利用されただけに過ぎない。
結果として三兄弟は救われたかもしれないが、そうなったとしてもそれはあくまで結果だっただろう。

で、ペンギン帽子ことプリクリ様ことモモカの力は、自己の犠牲と引き換えに、ごくパーソナルな世界を書き換える能力のように思う。
だから晶馬は燃え尽きるしかなかったし、たとえば陽毬がトリプルHの一員に戻るような、世界を遡る変革は起こり得なかった。
(冠馬が砕け散った理屈は良くわからん。本来運命を乗り換えることができたのは冠馬で、その権利を陽毬に譲り渡したとかそんな感じだろうか)

ただそこには、最初から冠馬と晶馬が存在しなかった代わりに、陽毬が笑顔で生きている世界が横たわっているだけだ。

逆に言えば、輪るピングドラムとは、一人の犠牲で実現できる物事など、やはり一人を救う程度のことでしかないと言う、残酷な物語だったのかもしれない。

あの世界には透明な存在にならなければならない子供はもういないのだろうか。
もしかしたら、眞悧がぶっ壊した後の世界の方が、もっといい世界だったんじゃないかと思ったりもするのだ。

投稿者 ushila : 00:41 | トラックバック

2011年12月24日

TPPと著作権(4)そこでフェアユース。

アメリカ型の著作権法とヨーロッパ型の著作権法のモデルの違いは様々あるのだが、特に権利制限の方式には大きな違いがある。

すなわち、権利が制限される条件を細かく規定して列挙するか、こういう条件を満たせばどう使ってもいいよ、と包括的に規定するか。

後者が議論カマビスシイ、「フェアユース」規定、というヤツである。

で、あたかもフェアユース規定は著作物の自由な利用を促進する魔法の杖みたいな言われ方をしているが、本来のフェアユースには、厳密な判断基準が設けられている。

単純に言えば、
・何のために
・何を
・どのように
・どれだけ
利用し、
・それによって権利者は不当に損をしないか
と言うことを基準に判断される。
(日本の「引用」の判断基準によく似てると思う。最後の損得勘定が特徴的だけど)
仮に著作権侵害が非親告罪になっても、対極にフェアユース規定置いておけばバランス取れるんじゃないの?って言うね。

デッドコピーは「著作物の通常の利用」に大きな影響を及ぼすので司法の直接介入を許すが、二次創作はよっぽどオリジナルのイメージを損なうものでない限り、フェアユースとして認められる可能性があって、おいそれと手を出せないみたいな。
それでもエロとやおいは全滅かもしれませんけど。

いや、わかんねーな。
こんだけ野放しにしてきた同人活動について、二次創作の許諾を得ることが「通常の利用の態様」と言い得るのかな(笑)。
もちろん冗談ですけど。

ただ、フェアユース規定については、権利侵害の有無を常に裁判所が判断することになるので、法的安定性の観点からはあんまり賛成したくない。本来契約で解決できることまでフェアユース云々で余計こじれる気がする。

まああと基本的にTPPに参加すると同人誌が作れなくなってコミケがつぶれる、という話は、iPodから私的録音補償金とるの?の議論と一緒で、なんか象徴的なものを祭り上げて受け手を思考停止させる手法のようで俺は好かんね。
どっかの誰かに利用されてんじゃねーの?って感じがするよ。

投稿者 ushila : 16:43 | トラックバック

TPPと著作権(3)正しい分節

分節というのは、同じものと違うものを分けること。

もうねえ。
法律論なんだから版権って言うのやめようよ、とまず思うんだけど。
版権って元々有形複製を内容にする言葉なんだけどな。
ビジネス的には立体化とかを含むらしいけど。

同人誌は無許諾で、グッズは一日版権(一日の頒布に限った許諾)で、って言う分節が理解できない。
もはやTPP関係ないんですけどね。

問題なのは頒布の期間じゃなくて複製・頒布の点数だろうし、同人誌とグッズを分けるものはどこにあるのだろうか?

例えば、原著作物が小説で、作中の描写から(作中では描かれていない)キャラ絵を書き起こして立体化したものと、ただ単にマンガの作中からトレースして編集しただけのものを「画集」と称したものを想定する。

前者は(法律上の議論はあるものの)二次創作物ですらない可能性があり、後者はただの複製物だ。
一方、視点を変えれば、前者は立体物で後者は一応「同人誌」と呼べる。
赤松の理論では前者は許諾が必要で、後者は不要であるべきだ、ということになるが、法律論としては大きな矛盾が生じていると思う。

あるいは、イラスト集とポスターとタぺストリーに、それぞれマンガやアニメのキャラクターをイメージイラストとして描いたとする。
どれも平面だ。
ポスターとタぺストリーには素材の差しかなく、同人誌とポスターには体裁の差しかない。
すべて無許諾の二次創作行為だった場合に、どれを良しとし、どれをNGとするかには、著作権法上は恣意的な分節しか存在し得ないように思う。
私的自治の原則と言うのは自分の財産を自由に扱うことができると言うことだから、著作者個人が自分の著作物の利用形態についてこれはいい、これはダメ、と言うことができるのは当たり前のことなんだけど、それが業界のスタンダードであるかの様に言うのは行き過ぎだろう。

グッズ化はロイヤリティーも高くて権利者側は元手がかからないからオイシイんですと言うのはビジネスの問題。
同じく、製作コストが高いので同人活動としてはやりすぎだと言うのは、あくまでも主観の問題。

さらに、同人誌については無許諾が基本で、グッズ化はライセンスを得るのが基本に「なっている」と言うのであれば、それはもうそう言う慣行が存在しちゃっていることを認めてしまった方がスッキリする。
慣行上、同人誌は無許諾でも許諾されているのと同等であると言っちゃえばいいのだ。言えるもんなら(笑)。
俺としては認めるつもりはさらさら無いが。

その場合、赤松が言う、TPPから守るべき違法な同人活動なんて物は存在しないことになると思うんだけどね。


俺としては、権利者は同人活動に対して許諾権を留保している、という考え方が一番すっきりすると思うけどね。
権利者がやりすぎだと感じるものについては、許諾権の裏側であるところの差止請求権と損害賠償請求権と告訴権がいつでも発動するみたいな。
そうじゃなければ許諾を得たと同等の位置付けになるという。

何をするのも自由だが、やり過ぎたら怒られる。
これほどシンプルなルールも無いじゃないか(笑)。

もちろん、法的安定性は皆無ですが。
で、この考えかたは、何かに似ている。
と言うわけで次回に続く

投稿者 ushila : 16:37 | トラックバック

TPPと著作権(2)自由にまつわるエトセトラ

著作権の問題の大半は契約でクリアできる。
このスタンスにおいて譲るつもりはない。

同人と言うかアマチュアリズムにおいては、一方で「自由」の問題がある。

が、これにおいても様々な問題の断層が存在しているように思う。

まず、「契約を前提としては自由な創作ができなくなる」という意見について。
そこでやりたい自由な創作とは何か。
それは契約の内容で処理できず、また著作者の権利に優越すべき自由なのか。
多くは語らないが、本来自由とは他の誰かの自由と衝突するものだ。
そこが処理できないものはいわゆるアングラなので、アングラらしくやっていくしかない。ナマモノみたいに。


次に、憲法上保証されている「表現の自由」について。
これについては、なんで議論の俎上からすっ飛ばされてんだか理解できない。
二次創作がまがりなりにも創作である以上、いきなり国家権力が介入してきたら、絶対に創作・表現の自由と衝突する。
その創作活動が二次創作であるかどうか、原著作者の許諾の有無を国が独自に判断することが現実に可能であるとは考えにくい。
許諾の有無なんて原著作者に訊かないとわからないのだし、じゃあ親告罪の時代と何が違うのだろうか。
逮捕・起訴してから被害者に犯罪事実の有無を確認しにいくなんて楽しいこと、警察も検察もやらないよ。公判が維持できない。

あとねえ。
これ打撃食うのは、マンガよりもアニメの二次創作とか、マッドとかヒップホップ文化だと思うよ。
アニメは映画の著作物だから元々製作会社のものだし、レコード音源は著作権とは別の権利が認められている。
出版社との契約において翻案権を譲渡していない限り、原始的に二次創作に関する権利は作者が持っているマンガの場合とは事情が違って、企業が自分の権利侵害の有無を判断できることになる。


で。もうひとつ。
これは根源的な問いになるが、二次創作を行う人には、それをしない自由もある。または、あった。

たとえば、表現されていないものとか、創作的でない表現は、著作権で保護されない。
だから、高校の運動部でライバルとマネージャーと三角関係、という話が乱立しても、別にそれ自体は何らの違法性も形成しない。

あたかもその自由すら無いかのように言うのは、やっぱりフェアな姿勢とは言えないように思うのだが、どうだろうか。

投稿者 ushila : 16:33 | トラックバック