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2011年11月04日

血迷い熊オーバーキル

突破モンハン学園バトル小説の続き。

武装した俺は見て、芦田はまた狂暴そうに笑い、木槌を振りかぶった。

「なんだお前、ガンランスかー」
そう言いながら芦田が振り下ろす木槌を、俺は盾で防いだ。
手が痺れ、一歩後ずさる。

ガンランスというのが、この武器の名前らしい。
たしかに、ガンという名の通り、何やら引き金のような部品がある。
俺は地面に石突きを突き立ててみる。
ガシャン、と音がして、弾が装填された感覚があった。

ガンランスを構え直し、引き金を引く。
ドンッ、という腹の底に響く音と共に、ガンランスの先から炎が出た。
あまりリーチは長くないようだが、牽制ぐらいの役には立ちそうだ。
あとはまあ、普通の槍だろう。
重いからあんまり派手に振り回せないし、動きにくいが。

そもそも今は、ここから脱出する方法と、変身なんてふざけたことの原因について、芦田から情報をひとつでも多く聞き出すのが目的だ。

芦田は木槌を左右に振りながら、俺に迫ってきた。
俺はガードを固め、芦田の攻撃を受け止める。
芦田の攻撃の終わりに突きを入れ、左に回り込む。
「おい芦田、ここはどこだ!?」
芦田は大きく両手を広げ、こちらに向き直る。
「石が作った場所だー。渓流とか言うらしいー」
芦田が両手を前に振り、片手で横に凪ぎ払った木槌をまたガードする。
今度は砲撃を、芦田の顔面に浴びせてみたが、芦田は怯まない。
「じゃあ、どうやったらここから出られる?」
芦田は緩慢な動作で木槌を振り上げ、また振り下ろしてくる。
盾の上からでも骨に響くような鈍痛が走る。
って言うか、このままじゃ骨折とかするんじゃないか。
「俺がお前を倒せばおしまいだー」
……馬鹿げている。そんな一方的な話はない。
「じゃあ、俺がお前を倒したら?」
俺は芦田の背後に回り込み、大きな尻に突きを入れる。
三発目が縦に叩きつけるような動きに変化した。
「一緒だー。渓流は消えるー」
お前はそんなもっさりしたキャラなのに、なんでそんな色々詳しいんだ。あと、律儀に教えてくれるし。
「って、ウル姉ちゃんが言ってたー」
誰だそれ。まあ、疑問の半分は氷解したわけだが。

だんだん攻撃に目が慣れてきた俺は、ガードとステップを織り混ぜながら、芦田に反撃を加えていった。

「いてぇぇぇぇ!!!」
突然、芦田が吠える。
「いてぇよぉぉぉ!!!」
芦田の振り回すハンマーに、さっきまでより強い力がこもる。

そりゃ痛いだろう。
お前はガードとか回避とかしないのか。
売られた喧嘩だし、ここから出る方法がデスマッチ紛いの完全決着ルールであるらしい以上、俺も手加減できる立場ではないのだが、こっちの武器は何か先尖ってるし。

芦田はいよいよ獣染みた咆哮を撒き散らし、苛烈に木槌を振り回す。
俺は、ガードしている腕だけでなく、全身の間接がきしみ始めるのを感じていた。
どうやら、あまり長くは持たないようだ。
何かこいつを黙らせる方法はないのか。
そう思いながら砲撃の引き金を引いた瞬間、引き金が二段階押し込まれる感触があった。

ガンランスの筒先から青白い炎が迸り、空気が陽炎のように揺らめく。
次の瞬間、砲撃とは比べ物にならない大きな火炎が吹き出し、俺は反動で後ずさった。

芦田は火炎をまともに喰らい、鎧の腕のあたりを吹き飛ばされ、ゴロゴロと転がって倒れた。

俺は芦田を見ながら、引き金を確かめる。
深く押し込む機能は確かにあるのだが、さっきの火炎が吹き出す気配はない。
ふとガンランスに視線を移すと、放熱板のようなものが開き、熱風が吹き出していた。
ああ、さっきのは一発限りの必殺技なのね。連発できればあっという間に勝負がつきそうなのに。

しかし、今ので間合いが離れてしまった。
俺は武器を背負い、芦田に駆け寄ろうとする。
一瞬早く起き上がった芦田は、口からよだれを垂らしていた。
うわっ、汚ねっ。
怯んだ俺と芦田の間に、どこかから「ぐぅぅぅぅーーー」という重低音が流れる。
えーと。
さっきまでクッキー食ってたと思うんですが、もしかして腹減ってますか?芦田くん?
「がぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」
芦田がひときわ高く吠え、俺に飛びかかってくる。
俺はガードする間もなく、芦田に掴み上げられた。


続き「IG(インフィニット・ガンランス)」

投稿者 ushila : 2011年11月04日 23:17

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