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2009年06月04日

民主主義と人権と近代的自我というフィクション

予告どおり、デンパ多めでお届けします。

法律というのは、基本的に「こういうことにしておけば世の中がうまく行きそうだ」というフィクションの寄せ集めだ、って話は、以前にもしたと思う。
(そこには基本的に『実験』ができない、社会科学の特徴が反映されていると思うんだけどね)

では、近現代において法規範の根幹になっている「人権」……人間は生まれながらにして侵すべからざる平等の権利を持っており、いかなる理由においても差別されない……という概念はどうか?

結論から言うと、これはこれでフィクションなんだ、とは、思うわけだ。

何のために必要なフィクションだったかと言えば、主に『国家』または『国権』と言うものを、超人間的存在に拠らずに定義づけるために必要なものだったのだろうと。

つまり、「人権」が発見されたから「民主主義」が生まれたわけではなく、「民主主義」というフィクションを実現させるために「人権」と言う考え方が必要だったのだと、俺は考えている。
(だから、人権と言うものは発見されたものではなく、発明されたものに近い)

少なくとも当時、さらにヨーロッパと言う場所においては、規範の中心・権力の源は『超人間的存在』、すなわち、キリスト教における『神』であった。
実際問題、国家と言うのは前述の『装置』として機能している限り、その権力の源が何であろうと問題にはならないと思うのだが、当時のヨーロッパにおいては超人間的存在を権力の中心にすえるやり方に不具合が生じていたとともに、キリスト教自体が動揺していた時代でもあった。と。
(経済学的見地からは、ここに生産規模の拡大による商圏の拡大という要素を加えることもできる。
 ついでに、アメリカで国政選挙のつど、妊娠中絶の是非が取り沙汰されるのは、あの国が今でもカソリック的倫理観に支えられている証左なのだと思う)

で、そんな成立経緯を辿っている性質上、『基本的人権』には、3つの要素が必要だった。
すなわち。
人間に原始的に備わっているということ。
外的要因による「付け外し」ができないこと。
人間である以上、平等であること。

……さて。
俺が近代的自我ってヤツは嘘っぱちなんじゃないか、と思ってしまったりする根拠は、要するにここにある。
自由と平等を根拠とする人権思想は、特定の時代の特定の場所に必要だった思想、と言うことができる(あくまで、ある視点において、だが)。

しかし、人権思想がそれ自体として完結するためには、(前述したとおり)付け外しができてはいけなかった。
だから、権利の行使に(差別や障害などの)阻害要因がある人間にはその行使を補助する制度が必要であったし、他人の権利を侵害した者(=犯罪加害者など)であるからと言って、当然それを全面的に取り上げることは、思想になじまなかった。

拷問(による自白の強要)や残虐刑の禁止、心神喪失(耗弱)を理由にする刑の減免は、そうした思想的・文化的「井戸」から生まれている。
で、それら=西洋的近代社会の枠組みから生まれる副次的要素を受容する態度こそ、結局『近代的自我』と呼ばれるものなのだと思う。

で。だ。実際には。

拷問や差別は先進国においても消えたわけではないし、
今でも宗教裁判が行われ、投石刑などが行われている国や地域もある。
唯物史観においては資本主義社会の先にあったはずの共産主義国家では、「民主的独裁」の頂点にいるはずの人物が旧時代の王のように振舞う事例も枚挙に暇がない。
(ついでに言えば一応近代国家らしく「実力」を国権の元に集約しているから、民衆には事実上革命の権利もないという……)

この国においても、特にニュースバリューの大きい事件においては、加害者に対する残酷刑の復活を望む声や、情報隠蔽に対する反発の声が多く上がる。

つまり、現代においても、『近代的自我』はコモンセンスを占めるに至っていないのだと思わざるを得ないのだ。


……むふー(鼻息)。


で。だよ。
こういう文章を書いていると、国家論や法制度論は『現代』と言う時代に即した枠組みに脱皮するべきなんじゃねえの、とも思う。
で、そのときに「人権」の概念を回避して、『国家は利害の調整のために存在する装置なので、そのために必要なことしかやらない』と言う風に考えられないかと思うんだけど、どうもうまくいかん。
やりすぎかどうかを判定する仕組みが成立しないんだな。

で、制度によるコントロールが失われた、マッドマックス的鋲つきベスト着てヒャッハーの世界か、逆にコントロールが行き過ぎたディスティニープラン的な世界しか想像つかないんだが、想像力足らないのかね?俺。

投稿者 ushila : 2009年06月04日 20:39

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