« CD買いあさり。 | メイン | 現代J-POP考(4)名曲という罠。 »

2008年12月23日

現代J-POP考(3)「歌謡曲」とはナニモノなのか

doblog時代にやってたシリーズを思い出したように復活させてみる。

 語義的な意味で言えば、「歌謡曲」と言う言葉は、「歌として謡われる曲」という意味しか持たない。

 もっとも、クラシック(ってのもおいらどっかで語るべきかなと思ってんだけども)の歌詞つき楽曲は「歌曲」だし、純粋邦楽(日本の曲一般を「邦楽」と呼ぶのは誤用じゃないかと思ってるけれども)のそれは「謡曲」になるので、概ねそれらからは分離された、「日本における大衆のための現代音楽として創作され、かつ歌唱とともに演奏されることを前提としたもの」というのが定義になるんじゃないかと思う。

 現代において一般的に「歌謡曲」と言えば、「演歌」と、そのわずかな周辺領域(「ムード歌謡」とか)を指す言葉になっているように思われるわけだが、それは「歌謡曲」の歴史に対して誤認識を生ぜしめるのではないか、と考えるのである。

 ぶっちゃけた話。
 「歌謡曲」は、常に新しい表現形態から対立概念にされ続けた言葉なんじゃないかと思う。

 「歌謡曲」と言う言葉が「流行歌」(「カチューシャの花」とか「ゴンドラの唄」とか…)と言う言葉に取って代わった厳密な一時点、と言うものは、不勉強にして発見できないのだが、少なくとも現代的な意味での「演歌」が「歌謡曲」のメインストリームになった時代は、少なくとも戦後しばらくしてからであると言うことだけはできると思っている。
 「演歌歌手」と呼ばれる人々よりも先に、戦前から活躍する声楽の流れを汲む人々が居たことや、たとえば今もって美空ひばりが「演歌歌手」と呼ばれないことも、その証左ではあるまいか。
(ひばりさん、いわゆる演歌も歌ってるんだけどね)

 むしろ「演歌」とは、もともと純粋邦楽よりも20世紀初頭の西洋音楽の影響が強い「歌謡曲」に、半ば先祖帰りのように民謡や浪曲の要素を取り入れた(あるいは「接ぎ木」した)ジャンルだと、俺は考えている。
 演歌のタイトルに、民謡を示す言葉(おけさ、じょんから、~~節など)が多く含まれているように。

 実際には戦後の「歌謡曲」には、いわゆる「流行歌」の流れを汲む、戦前の西洋音楽的な楽曲も多く存在したし、ナベプロ的な「洋楽に日本語詞をつけた」楽曲の流行(ロカビリーブームもこの辺か?)も同時並行的に起こっていたのだが、「演歌」はその先祖帰り的な土着性ゆえか、あるいは民謡歌手や浪曲師と言う別分野で修行を積んだ「ヴィルウトゥオーゾ」(筆者注:わざと使ってます)をその歌い手として選んだことによる「技術」の高度さゆえか、あたかもずっと前からそこにいたようにメインストリームの位置を占めた。

 ここにおいて、「歌謡曲」が狭義において演歌とそのわずかな周辺領域を示す言葉になったと考える。
演歌自体が歌謡曲の一分野であり、あるいはそれに対する、それ以前の文化からのカウンターであったにも拘らず、である。

 で、その後現れた「歌謡曲」には、実にさまざまな名がついたわけだが、概ねそれら全ては「新しい」と言うことや「反体制」と言うことを旗印にした。
(ほぼ唯一そうした動きと無縁だったのが「アイドル歌謡」だったんじゃないかと思うが、あれはあれで「ノベルティミュージックの顔をした、職業作家たちの実験場」という性質を持っている様な気がする)

 しかし、それら全ての「新しい歌謡曲」には、以下のような通底する特徴がある。
  ・欧米の新しい音楽ジャンルに呼応して誕生すること
   この点については、ほぼ説明は不要だろう。

  ・ジャンルの発達とともに言葉=「詞」を重視する現象が発生すること
   英語詞から日本語詞へのバランスのシフト、定期的に起こるバラード曲のヒット、
   ミュージシャン自身の「文学志向」などが挙げられる。

  ・国内の音楽文化にルーツ探しを始めること
   「竹田の子守唄」(赤い鳥)などはやや極端な例だとしても、
   ティン・パン・アレーやはっぴいえんどに対する現代の位置づけなどが例に挙げられる。


 これらのことは、実は日本の歌謡曲=大衆歌曲文化がその誕生からそうであったように、海外の音楽文化と日本国内の音楽文化を混交して新しい表現を導き出すことなのであって、そのジャンルにどのような名前がついていようと、それは「歌謡曲」なのだ、と考えるのである。


で、と。
何が言いたいかというと。
・・・そのうち書くよ。忘れた頃に。

投稿者 ushila : 2008年12月23日 19:09

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.torihan.com/mt/mt-tb.cgi/1036

コメント

コメントしてください




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)